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最高裁判所第三小法廷 平成5年(オ)1169号 判決 1997年5月27日

上告人

株式会社光丘

右代表者代表取締役

市來政家

右訴訟代理人弁護士

藤井勲

山本寅之助

芝康司

森本輝男

山本彼一郎

泉薫

阿部清司

橋本真爾

出口みどり

被上告人

藤木祥弘

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人藤井勲の上告理由について

一  原審の適法に確定した事実関係の概要等は、次のとおりである。

1  上告人は、預託金会員制ゴルフクラブである聖丘カントリー倶楽部(旧名称はPLゴルフ場。以下「本件クラブ」という。)を経営する会社である。被上告人の父藤木龍一(以下「龍一」という。)は、昭和三七年四月八日、上告人に四〇万円を預託して、本件クラブの会員となった。

2  昭和六三年五月二六日に改正された本件クラブの規則第二一条(以下「本件規則」という。)は、相続による会員の地位の承継に関し、(一) 会員が死亡したときは、相続人は、六箇月以内に、(1) 預託金の返還手続、(2) 相続人のうち一名への名義書換手続、(3) 第三者への会員資格の譲渡のいずれかの手続を選択して理事長に届け出なければならない、(二) 相続人が右の期間内に右の届出をしないときは、上告人は預託金の返還手続をとる、(三) 相続人が(2)又は(3)の手続を選択した場合には、会員たる資格が譲渡された場合に準じ、事前に本件クラブの理事会及び上告人の取締役会の承認を得なければならない旨を定めている。

3  龍一は、平成二年七月二四日死亡し、その相続人は二男である被上告人、妻篤榮、長女藤岡澄子、長男龍彦、二女浦川佐千子の五名であったところ、平成三年四月一日、右相続人らの間で、龍一が有していた本件クラブの会員権を被上告人が取得する旨の遺産分割協議が成立した。

4  被上告人は、同月五日、上告人に対し、右会員権につき、龍一から被上告人への名義書換えの手続を求めたが、上告人は、既に龍一の死亡後六箇月の届出期間が経過しているため、本件規則により、相続人への名義書換えは認められないとして、これを拒否した。

5  なお、本件クラブにおいては、会員資格を理事会等の承認を得て他人に譲渡し得ることとされているところ、被上告人が本件訴えを提起した平成三年六月当時の本件クラブの会員権の取引価格は約三四〇〇万円であった。

二  本件請求は、被上告人が、本件クラブの理事会及び上告人の取締役会の承認を停止条件とする本件クラブの会員としての地位を有することの確認を求めるものであるところ、上告人は、龍一の死亡後本件規則所定の六箇月の期間が経過したことにより、被上告人は、本件クラブの会員となり得る地位を失った、と主張する。

三  本件クラブの会員権は、他人に譲渡することが認められており、ゴルフ会員権市場において預託金の金額よりも高額の取引価格で売買されている。また、本件規則は、会員の相続人が、理事会等の承認を得て本件クラブの会員となり、又は会員となり得る地位を第三者に譲渡することを認めている。他方、死亡した会員の相続人が複数いる場合には、相続人間で早期に遺産分割に関する協議が成立しないために、相続人が会員の死亡後六箇月以内に本件規則所定の手続のいずれかを選択するに至らない事態も生じ得るが、相続人から所定の会費が納入されている限り、会員の地位の承継の手続が遅延することによって、上告人又は本件クラブが格別の不利益を被ることはないということができる。このような本件クラブの会員権について、本件規則所定の六箇月の起算点を会員の死亡時とし、六箇月の期間経過後は相続人は預託金の返還を求める権利のみを有すると解することは、遺産分割に関する協議が早期に調わなかった会員の相続人に著しい財産上の不利益を一方的に被らせることになり、相当とはいえない。したがって、本件規則は、死亡した会員の相続人が複数いる場合には、相続人の間で遺産分割に関する協議が成立した後六箇月以内に右規則所定の手続をすべき旨を定めたものと解するのが相当である。

そうすると、被上告人は、本件規則所定の期間内に、被上告人への名義書換えの手続を選択し、これを上告人に申し出たものというべきであり、これと同旨をいう原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官園部逸夫 裁判官大野正男 裁判官千種秀夫 裁判官尾崎行信 裁判官山口繁)

上告代理人藤井勲の上告理由<省略>

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